【違和感】マスクや消毒液の転売はそんなにダメなのか?市場経済の原則から考察してみた
1. マスクの転売が規制されていますが...
先日から、「マスク転売」が規制の対象となりました。
「①不特定の相手方に対して販売をする者からマスクを購入し、②購入価格(仕入価格)を超える価格で、
③不特定又は多数の者に対して転売する行為が禁止」
されています。
また、罰則規定も割と厳しく、
「違反行為を行った場合、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金、又はその双方が科されます。
また、法人の代表者や従業員等が業務として違反行為を行った場合は、行為者を罰する
ことに加え、法人等に対しても、上記の罰金刑が科されます。」
(出所)マスク転売規制についてのQ&A
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/tenbaikisei_qa.pdf
この情報を聞いて、
「よろしくない転売屋が規制されてよかった」
「マスクが適正価格で手に入るぞ」
と思った方も多いかも知れません。
しかし、これは本当にそうなのでしょうか?
経済学部出身・米国公認会計士の私が「市場経済(マーケットエコノミー)」の観点から
感じる【違和感】について解説したいと思います。
(注:市場経済とは、需要が大きく、供給が少ないものの価格が上がる、という私たちが日々経験している仕組みのことです。
きわめてざっくりいうと、”市場-いちば”で、どんなものの値段が高くなり、どんなものの値段が低くなるのか、ということです。)
2. 市場経済の観点では、転売はどうなのか?
2-1. そもそも「転売」の意味とは?
転売のビジネスとは、要は、
「安い値段で仕入れて、高く売る」という、
きわめて単純な話です。
そうすると、 商品を仕入れて販売して利益を出している
通常の卸売や小売の業者も、広い意味では「転売」を営んでいる
ということになります。
2-2. 「転売」の物流機能
上記の広い意味での「転売」は、
「必要な人に、必要なモノが届くようにする」
という大切な機能を担っています。
店にしろ、ネットにしろ、
必要な人が商品をさがして、
そして、手に入れられるようにしていますよね。
また、その重要な機能を担うからこその、
対価としての販売利益である、とも言えます
2-3. 「転売」の価格調整機能
さらに、
「適正価格で売っていないから、転売事業者は悪だ!」
とみんなすぐに思うようなのですが、
これは本当なのでしょうか??
市場経済のルールに照らすと、
値段がいつもより高かろうが、なんだろうが、
買う人がいる限り、それは適正価格以外の何物でもありえません。
また、それによって得る利益ももちろん適正なものです。
そして、ある意味、適正価格に近づけようとしているマスク転売を
締め出したことでなにが起きるでしょうか?
ーそう、より高く買ってくれる場所に商品が流れてしまいます。
結果として、 日本では、高い価格ですらマスクが買いづらくなってしまいました。
必要な人に商品を届ける大切な「物流機能」が
損なわれてしまった、ということになるでしょう。
2-4. 本来問題なのは「転売」ではなく「価格設定」
では、「転売」そのものは特に否定されないとしたら、
いったい何が問題なのでしょうか?
これは、究極的には「価格設定が間違っている」だけの問題です。
需要が高まっているのに、同じ価格で売っている事業者がいるために、
その価格の歪みを修正しようとしている人たちが出てしまう(!)
というのが本質です。
例えば、有名なアーティストのチケットを転売しても利益が出ない価格設定に
してしまえば、誰一人として転売することはなくなります。
これは、オリンピックのチケットなどでも同じです。
(転売をそんなに防止したいと言うなら、これが一番ですし、
イベント開催者の利益も”もっとも適切”になるでしょう。)
3. まとめ
こう考えてみると、国がマスク転売を禁じたことは、
自ら市場経済の自然なモノの流れを止めたことで、
かえってマスクを手に入れにくくしたことでしょう。
マスクを欲しい人が必ず手に入るようにしたい、というならば、
福井県のようなマスクの購入権利を国民に付与する、
などが正着だったのでしょう。
(マスクを買うお金が本当にない人は別として、
アベノマスクのように無料配布すると、
もう持っていて要らない人や欲しがっていない人も届くので、
かなり効率が悪いですね。)
国の施策や、メディアの報道をそのまま受け入れてしまうと、
マスク転売は”暴利をむさぼる完全なる悪”のようなのですが、
もともとは市場の歪みを正していくれているだけですので、
その点は冷静に考えたいものです。
(再度注:筆者はマスクやその他の物品を転売したことはありません)
では!!
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